「白色申告を行うから、帳簿はつけていない」
「帳簿をつけていないけど、税務調査に入られても大丈夫かな?」
そのように考えている個人事業主の方はいませんか?
2022年現在、記帳の義務・帳簿の保存義務はすべての個人事業主にとって欠かせないものになっています。
もしも帳簿をつけていないとどうなってしまうのか、気になる方はぜひ読んでみてください。
白色申告でも帳簿をつけていないことは大問題?
平成26年(2014年)以降、すべての事業者には帳簿をつけることが義務づけられています。
以前は所得の少ない白色申告者には記帳の義務がありませんでしたが、現在では青色申告・白色申告や所得の大小に関わらず、全ての事業者に記帳の義務と帳簿の保存義務があります。
それでは、万が一帳簿をつけていないとしたら、どうなってしまうのでしょうか?
①税務調査で言われるがままに課税される
帳簿をつけていない白色申告者の最も重いペナルティは、推計課税です。
推計課税とは簡単に言うと、税務署が所得金額を勝手に決定し課税することをいいます。
もしも事務所に税務調査が入り、帳簿書類をつけていないことや証拠書類(会計帳簿、領収書)がないことが発覚した場合、税務署は正確な所得を把握することができません。
そのため、過去の利益率や同業他社の利益率、資産・負債の状況、売上や仕入・経費の単価などをもとに税務署が所得金額を推計し、課税する方法が取られます。これが推計課税です。
推計課税によって認定される所得は実際の所得よりも高くなることが多く、個人事業主は言われるがままに余計な税金を支払わされることになってしまいます。
②仕入れの消費税額が控除されない
帳簿をつけていない白色申告者が受けてしまうペナルティの2つ目は、消費税の仕入税額控除が認められないことです。
仕入税額控除とは、消費税の二重課税を防ぐための制度で、控除を受けるためには、帳簿を作成していること、経費にかかる領収書等を保存していることが条件となります。
そのため、帳簿がないとこの仕入税額控除を受けることができず、ここでも通常以上の税金を支払わなければなくなってしまうのです。
③会計上の罰則
白色申告者が帳簿をつけていない場合、帳簿の保存義務に違反した場合の大きなペナルティを2つ紹介してきました。
実は2022年現在、帳簿をつけていないことや、帳簿の保存義務に違反したこと自体についての会計上の罰則規定はありません。
しかし、この状況が問題視され、税制改正によって令和5年分確定申告(2024年3月締切)以降は罰則が定められることとなりました。
内容は以下の通りです。
不記帳・不保存であった場合(提出をしなかった場合)記載が著しく不十分である場合 | 通常課される過少申告加算税・無申告加算税の割合に10%加重 |
収入金額の記載が不十分である場合 | 通常課される過少申告加算税・無申告加算税の割合に5%加重 |
個人事業主の確定申告は税務調査で要注意?
「税務調査なんて自分には関係ない」と考えている個人事業主も多いと思います。
実際に個人事業主が税務調査を受ける確率は約1%といわれています。100年に一度といわれる個人の税務調査ですが、なかには何度も税務調査を受ける事業者もいるのは事実です。
ここからは、税務調査ではどういった業種が狙われやすいのか、注意すべきポイントを中心に解説していきます。
①狙われる業種は?
税務調査の対象となりやすい業種は国税庁「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」から推測することができます。
トップ10は下記の通りです。
1 プログラマー
2 畜産農業(肉用牛)
3 内科医
4 キャバクラ
5 太陽光発電
6 建築士
7 経営コンサルタント
8 小売業・犬
9 不動産代理仲介
10 商工業デザイナー
従来のランキングではキャバクラ・風俗業など夜の仕事が上位を占めていましたが、最新のランキングではプログラマーが第1位となっています。
プログラマーや経営コンサルタントなどの職種は、仕入などの経費はほぼ発生しないという見解を持たれているため、仕入や接待費などが高額な場合は調査対象に選ばれやすくなる可能性があります。
また、伸び盛りの業界は税務調査の対象となりやすい傾向があり注意です。
インターネット取引もそのひとつですが、メルカリなどのフリマアプリやネットオークションも税務調査の対象になることには充分注意しましょう。
最近では、ギャラ飲みアプリ「PATO」の運営会社を東京国税局が調査し、税金の申告漏れが多数明らかになったというニュースもありました。
②帳簿をつけていない個人事業主の税務調査事例は?
「申告漏れの多い業種」第1位はまさかの「プログラマー」でした。令和2年度「税務調査」の統計【税理士が解説】 | 幻冬舎ゴールドオンライン
https://gentosha-go.com/articles/-/41705
最新のランキングではプログラマーが申告漏れの多い業種のトップとなりました。
福岡県で暗号資産などの自動売買プログラムのソフト開発を手掛けたプログラマーが約2億円の所得隠しを行ったなど、多額の事例が影響していると思われます。
プログラマーは今後も税務署からマークされやすい業種となる可能性がありますので、申告漏れや二重計上には充分注意しましょう。
ギャラ飲みで無申告が発覚…ペナルティはどうなる?確定申告のイロハも解説| KaikeiZine|“会計人”のための税金・会計専門メディア
https://kaikeizine.jp/article/29093/
飲み会の主催者が参加者に対して謝礼金(ギャラ)を支払う「ギャラ飲み」。
このような収入は「給与所得」ではなく、「事業所得」「雑所得」のいずれかになるため、申告と納税が必要です。
違反した場合には無申告加算税、重加算税、延滞税などのペナルティが課されることを認識しておく必要があります。
帳簿をつけていない人はつけよう!
もしもこれを読んでいる個人事業主のあなたが帳簿をつけていないとしたら、一刻も早く帳簿をつけるようにしてください。
ここからは白色申告の具体的な帳簿のつけ方について解説していきます。
①帳簿とは?
帳簿とは、確定申告の際に正しい所得税を計算して申告するための書類のことです。
具体的には、取引年月日、取引先、収支の金額、内容などの取引内容を記録していく作業になります。
帳簿は確定申告のとき以外にも役立ちます。お金の動きを把握することで経営の判断に役立てたり、資金繰り状態を把握することもできる貴重な資料となります。
②帳簿の書き方は?
白色申告の際に必要な書類は下記の通りです。
・法定帳簿
・任意帳簿
・その他の書類
法定帳簿は、必ず作成が必要です。
任意帳簿は法定帳簿以外の帳簿のことで、現金出納帳や売掛帳、固定資産台帳などがありますが、作成は義務ではありません。
その他の書類には、棚卸表・請求書・納品書・送り状・領収書などがあります。
法定帳簿の書き方には、決まったフォーマットはありません。
売上、雑収入等、仕入、経費の4区分で記入を行うのがよいでしょう。
白色申告の帳簿は単式簿記で行います。
単式簿記は、1つの取引を1つの科目に絞って記入していく書き方です。
詳しくは国税庁がパンフレットや動画を用意していますので、参考にしてみるとよいでしょう。
これらの帳簿作成は手書きで行うことも可能ですが、会計ソフトを利用すると簡単・便利に行えるのでおすすめです。
③保存義務は?
帳簿や書類には保存義務があります。
白色申告に必要な書類の保存期間は、法律によって以下のように定められています。
法定帳簿 | 7年 |
任意帳簿 | 5年 |
関連書類(請求書・納品書・送り状・領収書など) | 3年 |
保存期間は、その年度の確定申告書の提出期限の翌日から起算となるので注意してください。
無料で使える会計ソフトを紹介!
帳簿を作成するのに手軽で便利なのが、会計ソフトです。
ここでは無料で使うことができるお得な会計ソフトを紹介していきます。
帳簿をつけていない個人事業主は、ぜひ導入を検討してみてください。
①弥生の白色申告オンライン
白色申告を行う個人事業主に特におすすめなのが、「やよいの白色申告オンライン」です。
簿記や会計の知識がなくても家計簿感覚で使うことができ、日々の取引入力や確定申告をスムーズに行うことができます。
すべての機能を永年無料で使うことができるのが大きな魅力です。
ただし、電話・メール・チャットなどのサポート機能を利用するためには有料プランへの加入が必要となります。
「弥生」シリーズはクラウド申告ソフトで53.9%ものシェアがあり、多くの税理士事務所でも使用されている安心のブランドです。
青色申告への移行もスムーズに行うことができ、将来を見越した導入もおすすめです。
②フリーウェイ経理
フリーウェイ経理Liteは、永年無用で利用ができるインストール型の会計ソフトです。
日々の仕訳入力から各種帳簿の出力、貸借対照表や損益計算書や製造原価報告書の作成など豊富な機能を完全無料で利用できます。
マニュアルやFAQ解説動画が充実しているので、会計初心者でも安心して使用できます。
会計ソフトの費用を抑えたい、とりあえず会計ソフトを試してみたい個人事業主におすすめのソフトです。
まとめ
白色申告者が帳簿をつけていないとどうなるのか、帳簿のつけ方や保存義務、注意点などについて解説してきました。
税務調査はいつやってくるかわかりません。もしも帳簿をつけていないという個人事業主はすぐにでも帳簿をつけるようにしましょう。
帳簿作成には、便利な会計ソフトの利用もぜひ検討してみてください。
おすすめの会計ソフト記事はこちらに紹介しているので参考にしてね〜!